【そして全国へ】※ネタバレあり(春高/椿原学園~稲荷崎戦)

今まで述べてきた飛雄の「成長」は、椿原戦で如実に示された。

初めての大きな会場でトスがうまく合わなかった飛雄だが、仲間を「信頼」し、「要求」を「伝え」(『すみません、少し時間貰います/234話』)、照準を合わせられるようになった。
そして勝利した。
稲荷崎戦では、そんな飛雄の「成長」が烏養さんによって説明された。

『自分はただ、最善と思うトスを上げるだけ』
『その先の全てまで、自分の手の中にあるワケじゃない』
『前の影山なら、全部自分で何とかしようとしてたかもしれないのにな』
(全て255話)
これらは的確に、飛雄の「成長」を表現していた。

飛雄は「ボールを託す」意味を理解した。
『その先の全てまで、自分の手の中にあるワケじゃない(255話)』
だから「新変人速攻」を止められた時も、焦らなかった。

ブロックが張り付いたトスで日向が決めた時も、飛雄は反応を示さなかった。
『自分はただ最善と思うトスを上げるだけ(255話)』だから。

そして飛雄と月島が見せた『白鳥沢ん時より高いじゃん(角名/256話)』なスパイクは、これらの「成長」の「成果」だった。

『ユース合宿からそんな時間経ってへんやん。飛雄クンに何があってん(宮/256話)』
その「何」がまさに、「王冠返還」だった。

このように、飛雄が成し遂げたこれらの「成長」。
実は「及川」が、ずっと示していた姿でもあった。


◆◆【及川】◆◆
『一人だけ上手くたって勝てないんだよ(2巻16話)』
『それじゃあ今日も、信じてるよお前ら(6巻49話)』
『「金田一はちゃんと凄いんだぞ」と証明してあげよう(6巻50話)』
『皆が一番打ちやすいトスを上げられる自信はあるよ(6巻53話)』
『個性の違うスパイカー達、それぞれ100%の力を引き出してこその、セッターだ(6巻53話)』
『「効率よく、燃費よく、常に冷静」が国見ちゃんのウラの武器なんだからさ(8巻67話)』
『チビちゃんが欲しいトスに、100%応える努力をしたのか(10巻84話)』
『”6人で強い方が強い”(15巻128話)』
『まずは狂犬ちゃんをノせる事(15巻132話)』
『諸刃の剣は百も承知。だからこそ生かしてみせる(15巻133話)』
『問答無用で無慈悲な信頼(16巻141話)』
『要求がある時は言う!(16巻142話)』
『まだ!お前の打点は!あと球1個分先だ(16巻142話)』

これらは全て、及川のセリフである。
このセリフを見ながら考察を見返すと、及川のすごさがよくわかるかと。

「日向」の存在を飛雄の「成長」における「陽」とするなら、「及川」は「陰」だと思う。
「及川」が飛雄の「超える存在」として在り続けたから、それを超えるための力を「仲間」と身につけていった。
「及川」の姿から「セッターとして大切なこと」を学び続けたから、ここまでの「成長」を成し遂げることができた。

「陰」がなければ「陽」もない。
及川がいなければ、飛雄の目覚ましい成長もなかった。


◆◆【終わりに(感想)】◆◆
考察では触れなかったけどHQは、「自分で考えることの大切さ」をも示す、とても深い作品だと思う。
全ての「成長」のキッカケは、「考える」ことから始まっていた。
そしてそれを監督やコーチが「はっきりと教える」のではなく、「自分で気付く」ように仕向けていたのも奥が深い。

宮の「おりこうさん」の意味を、飛雄が「考え続けて」いた時も。
烏養さんは気付いていたけど言わず、飛雄が自分で「気付ける」まで待った。
中々できることじゃないと思う。

それはそうと牛島に「お前は白鳥沢に必要ない」と飛雄が言われた時、日向は次のように言った。
『確かにお前”尽くす”って感じじゃねーな!(9巻87話)』

読んだ時は「お前がそれを言うか」と思ったけど、ここまで考察を終えてみると、これも深いセリフだったなと思う。
飛雄の本質「王様」を、日向は理解していたんだなと。
先生すごすぎませんか???

烏野に来たばかりの頃の飛雄を思うと、この成長っぷりに涙出る。
それらのすべてに伏線があったのがすごい…HQ奥が深すぎる。
ここまで丁寧に「精神的な成長」を描ききったのは、見事としか言いようがない。
それらの「精神的な成長」が、「技術的な成長」をももたらした…すごいとか神とか、そんな言葉じゃ全然足りない。
なんだろう…宇宙?
途中からだったけど、飛雄のこの約30巻にもわたる成長の過程を見ることができて、本当に幸せだと思う。

それはそうと、たった1日か2日で飛雄の「セッターとして致命的な弱点」を見抜いた宮はすごい。
及川も飛雄の弱点に気付いてたけど、「気付ける」ということはそれだけ「強い」という証でもあると思う。
ということは宮もかなり「強い」ので、稲荷崎戦で、「成長」した飛雄とどんな戦いを見せてくれるのか。

そんな飛雄がこれからどんな活躍を見せてくれるのか楽しみに、これからも応援し続ける!