【「仲間」の「力」への「信頼」/脱「孤独な王様」】(IH予選~青城戦)

飛雄は日向への「信頼」を覚え始めたと述べた。
では、日向以外の「仲間」への「信頼」はどうだろうか。


◆◆【仲間への「信頼」の芽生え】◆◆
青城との練習試合後、飛雄は次のように述べている。
『次戦う時も、勝つのは俺達だ(2巻15話)』

「仲間」を「強い」と「信用」している(現在)だけでは、「勝つのは俺達だ」とは言えないはず。
なぜなら「勝てるかどうか」は誰にもわからない「未来」のことであり、それを「俺達なら」「勝てる」と言い切った。
それはつまり、「仲間」の「力」を「信頼」し始めている証である。

「俺一人で勝てる」と思っている=「誰も信頼していなかった」ら、言えないセリフである。
それは、金田一のセリフでも証明されている。
『いっつも”俺は””俺が”って、一人で戦ってるみたいな言い方してたくせに(2巻15話)』

また、IH予選の伊達工戦終盤で、飛雄は東峰に繰り返しトスを上げた。
それを烏養さんは次のように言った。
『セッターの信頼を勝ち得ているという、何よりの証拠だから(6巻47話)』

このことからも、飛雄は「仲間」の「力」を少しは「信頼」していることがうかがえる。

さらにこの時、飛雄は東峰が「決められる」とは思っていなかった。
それは「誰にトスを上げるか迷った」シーンから推測できる。

しかし菅原の『もう1回(※)』と、何より東峰自身の『”決まるまで”だ!!(※)』との「”勝ち”への執着」を「信用」し。
「東峰さんなら”決められるかもしれない”」と「信頼」し、「スパイカーが打ちやすい」トスを上げた。
『旭が得意なのは、ネットから少し離した(菅原※)』
(※全て6巻47話)

飛雄が日向以外の仲間へ、初めて「ボールを託した」瞬間だった。
『二人のセッターにトスを託されたんだから、自信持てないわけないよなぁ(烏養さん/6巻47話)』

しかしその「信頼」は、不確かなものだった。


◆◆【脱「孤独な王様」】◆◆
その後のIH予選青城戦における烏養さんのセリフが、それを証明している。
『そんで戦ってんのはお前だけじゃなく、”烏野”だ(6巻52話)』

この時飛雄は、一人で戦おうとしていた。
コートには6人いるのに、一人で戦おうとする心理は次のようなものだと思う。
「(及川と)互角に戦えるのは、俺しかいない」

つまり飛雄は、仲間の「力」を完全には「信頼」していなかった。

だから焦った、一人で何とかしようとした。
そして下げられてしまった。


◆下げられた時に飛雄は、縁下に次のような言葉を投げかけられた。
『ああやって声かけながら、スパイカー夫々の表情とか今日の調子とかそういうの、見てるんだと思うよ(7巻56話)』
この時飛雄は初めて、「選手の状態を把握すること」を知った。

さらにその後、縁下と菅原から次のことを教えられた。
『そいつらがちゃんと100%の力で打てたら、多少ブロックが立ちはだかったって、ちゃんと戦えると思わないか?(縁下)』
『うちの連中はちゃんと皆強い(菅原)』
(共に7巻)

菅原のトスで田中が点を獲った時、縁下に言われたセリフを反芻している飛雄の描写がある。
この時に、飛雄は「理解」した。
「田中さんたちは”ちゃんと強い”」と。
「この人たちとなら、”勝てるかもしれない”」と。

飛雄が、「仲間」の「力」を確かに「信頼」した瞬間だった。

その「信頼」を抱いたから、その後飛雄は焦ることなくコートがよく見えるようになった。

『ブロック居ると、そっちのが気になっちゃって(7巻56話)』
「信頼」がなければ「俺がブロックをふりきらないと」との焦りを生み、視野が狭まる。

そして「選手の状態を把握すること」を知った飛雄は、初めてそれを実行に移し、月島から「スパイカーも皆何かしら考えている」ことを知った。
「俺の言うことを聞かなくても」「ちゃんと強い」から「きっと大丈夫」と「信頼」し、月島の「要求」に応え、一定のトスを上げるようにした。
飛雄の「信頼」に応え、月島は点を獲った。

飛雄の、確かな「成長」が描かれた。

及川と岩泉のセリフが、それを証明している。
『飛雄が、独裁の王様からマトモな王様になろうとしてるとわかった(及川)』
『あの影山が、今やっと他人への信頼を覚え始めたってことか(岩泉)』
(共に8巻)

こうして飛雄は、一人で戦うことをやめた。
「この人たちとなら勝てるかもしれない」との「信頼」を覚えたことで、飛雄は「孤独な王様」ではなくなった。

ちなみにここで『信頼を覚え始めた』と表現されているのには、深い理由がある。
その理由は後の【「仲間」への確かな「信頼」/王冠返還】の章にて判明する。


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