【「仲間」への確かな「信頼」/王冠返還】(白鳥沢戦~伊達工戦)

そうして臨んだ春高予選決勝。
白鳥沢戦では主に、日向や月島を始め飛雄以外の烏野の成長が描かれていた。
飛雄については、「成長の成果」が描かれた試合だったと思う。

バテても焦ることなく交代を受け入れ、
『良い仕事しやがるな(岩泉)』
『ムカツク程見えてやがる(及川)』
(共に21巻189話)
岩泉と及川にこう言われるほど、最後まで冷静に対処し続けた。

IH予選青城戦の頃の飛雄からは、考えられない姿だったと思う。
それだけ飛雄は「成長」した。
ただ1つだけ、腑に落ちないことがあった。

飛雄がバテた。

日向に張り合うぐらい、飛雄も体力あったはず。
実際飛雄は「スタミナ5」(日向と同じ)で、「スタミナ3~4」の東峰や澤村、月島、田中は立っていた。
セッターは疲労が激しいとの説明はあったけど、それだけではないはず。
これも何かの伏線なのではと考えていたら、ユース合宿編でそれが明かされた。

ユース強化合宿時。
飛雄のプレーを見た宮は、飛雄をこう評した。
『おりこうさん(24巻215話)』。

その意味を飛雄が尋ねた時、次のように答えた。
『まじめで素直でエエ子やね(宮/25巻219話)』

これが褒め言葉ではないことに、飛雄は気付いた。
『褒められてはないと思うんですが(25巻222話)』

しかしその真意を、理解できずにいた。


◆◆【「王様」】◆◆
「トス無視事件」以降、飛雄は様々なことを学び、「スパイカーが打てる最善のトス」を上げるようになった。
それが飛雄を「孤独な王様」から解放し、烏野は春高への切符を手にした。
「これで自分はいい」。
そう信じていた、はずだった。

それなのにユース合宿後の伊達工との練習試合。
東峰と田中のスパイクが決まらない。
不満を募らせた飛雄は、次のセリフを吐き出した。
『じゃあ決めて下さいよ(25巻223話)』
『俺は良いトス上げてます!もっと決めて下さい!!(25巻224話)』

これは「俺のトス」で「決める」ことをスパイカーに「要求」しており、それは「俺の(ムチャブリ)トス」を「打て」と「要求」していた北一時代と同じである。
トスを合わせるようになっても、「だからトスを打て」と「スパイカーに”要求”すること」は、変わっていなかった。
「スパイカーに”要求”すること」が「王様」であると、ここで示されたのである。

それに飛雄も気付いたから「しまった」という表情をした。
それは回想からうかがえる。
「トスを無視される」
「コートにいられなくなる」
「及川さんを超えることなんて夢のまた夢」

だから月島もこう言った。
『「王様」に逆戻りだったりして(25巻223話)』
『久々に王様節なんじゃない?(25巻224話)』

ここで重要なのは、今まで飛雄が「試合のことで」「謝る」のは、「自分のトスが」「悪かった(間違っていた)」と「判断した」時だったことである。

青城との練習試合時、日向へのトスが合わなかった時『悪い、今のトス高かった(2巻12話)』。
IH予選、青城戦ラスト、変人速攻がドシャットされた時『悪かった。最後、完全に読まれた(8巻69話)』。
東京合宿時、新変人速攻が合わないでいた時『俺がトスミスってるうちは、お前の練習になんねえだろ(11巻90話)』。
春高予選白鳥沢戦時、月島へのトスが合わなかった時『…悪い(18巻172話)』。

けれどもこの時の飛雄は北一の頃と違い、「スパイカーが打てる最善のトス」を上げている。
ここで謝ったら、その「トス」さえも「悪かった」と認めることになってしまう。
だから飛雄はためらった。

しかし実際、東峰と田中はスパイクを決められない。
このままではまた、「バレーができなくなってしまう」。

だから飛雄は、「無理矢理」認めようとした。
「俺(のトス)が、悪かったんだ」。
この時の飛雄の必死の形相が、その心情を物語っていると思う。
そして謝ろうとした。

だから、日向は遮った。

『前から思ってたけど、”王様”って何でダメなの?』
『横暴だからだっけ?自己チューだから?』
『お前が”王様”かどうかは、あんまり関係ない』
(全て日向/25巻224話)

「トス」が、「王様」が悪いわけではないと、日向によってはっきりと示されたのだ。


◆◆【「ケンカ」しろ】◆◆
そもそも「スパイカーが打てる最善のトス」を飛雄は上げてるから、「トス」の問題ではない。
なら新しいことを試そうとした東峰や田中が悪かったのかというと、それも違う。
「対戦相手が必要な技」を練習試合で試さずに、いつ試すというのか。

では何が悪かったのか。
烏養さんのセリフによって、答えは示された。
『ケンカしないって事じゃ、ねえと思うぞ(25巻224話)』

「ケンカ」すればよかったのだと、示したのである。

「ケンカ」とは、「要求(意見)」を相手に「伝え」、言われた方も自分の「意見」を「伝え」、その「意見」が「合わなかった時」に生じる問題である。
それは、東京合宿の時に日向と飛雄が示している。

日向は「目を瞑って戦えるようになりたい」と「要求」を飛雄に「伝えた」。
それに対し飛雄は”お前には無理だ”と「意見」を「伝え」否定した。
そこで2人とも言い分を「ゆずらなかった」から「ケンカ」になった。

それを今回の件に当てはめると、次のようになる。

飛雄は「スパイカーが打てる最善のトス」を上げている。
だから「決めて欲しい」との「要求」を、2人に「伝え」ればよかった。
「なぜ決められないのか」との「疑問(意見)」を、「伝え」ればよかった。
そうすれば田中と東峰は「新しいことを試そうとしている」と「意見(説明)」を「伝えた」はず。
そこで意見がぶつかり「ケンカ」になるかもしれない。
でも「ケンカ」して、互いに納得できる着地点を見出せれば、飛雄は「理解」したはず。
一人でぐるぐる悩み、不満をためこみ、あのような言い方をすることはなかった。

ではなぜ飛雄は、「要求」を「伝えなかった」のか。


◆◆【「恐怖」ゆえの「おりこうさん」】◆◆
飛雄には「要求」がなかったわけではない。
それは次のセリフが示している。
『遠慮なんてしそうにない影山が、スパイカーの要求だけはすんなり飲んでた事の方が不思議だった(烏養さん)』
『今まであの影山が、他の連中に文句を言わなかった事の方が意外な気もする(菅原)』
(共に25巻224話)

これらから読み取れるのは、「飛雄にも”要求”はあったけど」「我慢して」「言わずにいた」ことである。

なぜ「我慢」していたかは、次のセリフからうかがえる。
『中学の頃のモメ事気にしてんスかね(山口)』
『昔の事引きずるタイプに見えないのにな(成田)』
『影山には中学の時の一本が、チョー重い一本なんだろ(縁下)』
(全て25巻224話)

「中学の時の一本」=「トス無視事件」。
つまり飛雄にとって「トス無視事件」は、それほどのトラウマとなっていたのである。

「トスを無視された」のは、「”ムチャブリトス”が原因」=「トスを打て」と「スパイカーに”要求”」したことが原因だと、飛雄は考えていた。
それが「王様」であると。
だから飛雄は「王様」=「要求」することをやめた。

あそこまで金田一たちに「トスを打て」と「要求」し続けていた飛雄が。
烏野では「スパイカーが”要求する”最善のトス」を上げる=スパイカーの「要求」を聞くだけで、自分の「要求」は一切言わなかった。
トスの調子を東峰や月島、千鹿谷に聞いた飛雄の回想で、そのことがうかがえる。

これは飛雄が、「スパイカーに”要求”」したら「トスを打ってもらえない」=「ここでバレーができなくなる」との「恐怖」を、常に抱いていたことを意味する。
つまり飛雄は、「仲間」を本当には「信頼」していなかったのである。

だから、トスを決めてほしいとの「要求」を「伝える」ことが「できなかった」。

宮の「おりこうさん」は、まさにこのことを見抜いていた。
だから宮は、次のように言った。
『飛雄君はセッターよりスパイカーのが、向いてるんちゃう?』
『セッターやってる時小難しーい顔しとったけど、レフトやってんの楽しそうやったで』
(共に25巻219話)

「”おりこうさん”のままでは、セッターとしていつか限界がくる」。
「だからその前に転向した方がいい」と。

白鳥沢戦で飛雄がバテたのは、おそらくこのための伏線だったのではと思われる。
もし飛雄が「体力ヤバイです」と「伝え」ていたら、何かが変わっていたのかもしれない。
”おそらく”と書いたのは、この伏線がまだ回収されていないから。
もし回収されるとしたら、それはもっとずっと先の話になる。


◆◆【「仲間」との「ケンカ」】◆◆
飛雄は「要求」を「伝え」なくても、「トス」が「決まれば」それでよかった。
トスが決まれば「勝てる」、勝てれば「必要とされる」、「ここでバレーができる」から。
なのにトスが決まらない。
このままでは、また「バレーができなくなるかもしれない」。

この「恐怖」からくる「我慢」は限界を超え、爆発した。
『俺は良いトス上げてます!もっと決めて下さい!!(25巻224話)』
「俺は”勝ち”に必要なんです」「東峰さんたちが”決めれば”勝てるんです」「だから決めて下さい」と。

上で述べたように、「トス無視事件」の時と同じである。
だから飛雄は、謝ろうとした。
「”要求”してすみません」
「俺(のトス)が悪かったんです」
「ここで、バレーしたいです」と。

だから、日向は否定したのだ。
「王様」であることは、「”要求”する」ことは悪くないと、飛雄に伝えた。

そして仲間に言われたセリフ。
『影山が何言っても納得しなかったら、おれは言う事聞かない(日向)』
『俺は内容はどうあれ、言い方がムカついたから聞かない(田中)』
『右に同じ(月島)』
『とか言いつつ田中は自分に言われた事は多分聞くよな(菅原)』
『まあな(澤村)』
『俺は優しく言ってもらいたくはある(東峰)』
(全て25巻224話)

これらは言い方を変えれば、「納得すれば言う事聞く」になる。
誰も飛雄が「要求」を「伝えた」こと、そしてその内容「もっと決めてほしい」を否定しなかった。
「これからも、お前のトスを打つぞ」と「伝え」た。
そして烏養さんは示した。
『ケンカしないって事じゃ、ねえと思うぞ(25巻224話)』

だからここで、飛雄は気付くことができた。

「スパイカーに合わせるだけじゃなくていいのか」
「”要求”は”伝え”てもいいのか」
「それでもここで、バレーできるのか」

そしてそのことを、月島が証明した。


◆◆【新、コート上の王様】◆◆
「月島は”もっと高く飛べる”と知った」=「選手の状態を把握した」飛雄は、
ボール1個半高く上げ=トスで「要求」を「伝え」、
合わなかったがボールを上げ続け=月島はここまで跳べると「信頼」し、
最善のトスを上げ続け、月島は「打った」。
そのスパイクはアウトになったのに、飛雄は笑った。
『跳んだな(25巻224話)』

この時の笑顔とセリフは、次のことを物語っている。

この時の飛雄には、「トスの先」=月島が「ボールを決めるか」「決めないか」は関係なかった。
「トスを上げて」「決まらなかった」(アウトになった)のに、「笑った」ことからうかがえる。
ただ月島が、自分の「要求」に「応えた(ボール1個半高いトスを打った)」ことを喜んだ。

飛雄が、「ボールを託す」ことの真の意味。
「お前を信頼しボールを任せる、その先はお前の自由だ」を、理解した瞬間だった。


これにより、飛雄は確かに「信頼」した。
「”要求”を”伝えても”トスを打ってくれる」
「コートにいられる」
「バレーできる」
「この人たちは、本当の仲間なんだ」。

飛雄が仲間を、確かな「仲間」として自覚した瞬間である。

実はこれ、初期の頃に澤村により提示されていた。
入部早々「ケンカ」した飛雄と日向に、澤村は「チームメイトの自覚」を求めた。
その時飛雄は反発したが(『”仲間(チームメイト)の自覚”なんて目に見えないモン、どうしろっつーんだ(1巻3話)』)、その「目に見えないモン」を、今、手にした。

こうして飛雄は、「選手の状態を把握する」ことの本当の意味を知った。
「ボールを託す」ことの、本当の意味を知った。
自分の居場所はここだと、仲間への確かな「信頼」を知った。

そして「新、コート上の王様」は誕生した。


◆◆【閑話休題/月島の「信頼」と仲間の「無知」】◆◆
ここで本当に「先生すごい」と思うのが、それを証明したのが月島ということ。


◆実は飛雄が「選手の状態を把握する」ことを初めて知り、試し、「仲間」の「力」を確かに「信頼」した時も、それを証明したのは月島だった。
(【「仲間」の「力」への「信頼」/脱「孤独な王様」】参照)

これが東峰や田中、澤村だったら「いい人だから」と考え、真に理解することはできずにいたと思う。
だけど飛雄を嫌っている(と思っている)月島が決めたことで、「ああ本当なんだ」と思えた。

「俺を嫌っている奴なのに、俺の”要求”に応えてくれた」

月島だったから、飛雄を誰よりも納得させることができたのだと思う。
さらに重要のは、月島が飛雄を「信頼」していたからこそ、これらがかなったということ。

月島はもともと、「王様」は否定していた。
『あーんな自己チューなトス、よく他の連中我慢してたよね、僕ならムリ(月島/1巻5話)』

だけど飛雄の「実力」は認めていた。
『そんなエリート、なんで烏野に居んのさ(月島/1巻5話)』
「なんでお前みたいな強い奴が、こんな弱小校にいるんだ」と言ったも同じ。

だから、「影山には一定のトスを上げられる力」があると「信用」し、「要求」を伝え。
「影山のこの”要求(ボール1個半高い)”に応えれば、”決められる(ブロックを打ち抜ける)だろう”」と「信頼」し、跳んだ。

日向の時もそうだったけど、月島からの「信頼」が、飛雄の「信頼」へと繋がった。


◆【「ケンカ」しろ】のところで「飛雄が”要求”を”伝え”ればよかった」と書いたけど、それは東峰と田中にも言えることだと思う。
2人は新しいことを試そうとしていた。
それで決定率が落ちると予測できるのだから、それを飛雄に「伝え」ればよかった。
そうすれば飛雄は理解し、不満を募らせることはなかったと思う。

2人がそれをしなかったのは「伝える習慣」がなかったのと、おそらく「知らなかった」から。
「影山にも”要求”はある」ことを。
今まで飛雄が何も「要求」せず、自分たちの「要求」に応え続けていたからそう思ってしまったと思われる。
『良い良い、甘やかすな(澤村/26巻225話)』

飛雄にも「要求」があると「知らない」ゆえに、何も言わずに試行しまくった。

けれど飛雄が初めて「要求」を「伝えた」ことで、2人は「気付くことができた」。
飛雄は「好き」で「スパイカーの”要求”だけに応えていた」わけではないことに。
飛雄にも「要求」は「あった」ことに。

だからそれ以降は、自分たちの「要求」を「伝える」ようにした。
『前からブロックとタイミング打つの試してみてんだけど、伊達工相手にはまだ上手くいかなくてさ(東峰)』
『俺も極々コース狙いは止めない。~ムカついても我慢しろ(田中)』
(共に25巻224話)
『さりげなくやってくれたら嬉しいカナ(田中)』
『俺には言ってくれ(東峰)』
(共に26巻225話)

それらに対し、飛雄は『場合によります(25巻224話)』と「意見」を「伝え」、「理解」を示した。
もう、「もっと決めて下さい」と飛雄が言うことはないと思われる。

このように、「要求」を「伝える」ことは「相手への”信頼”があって初めて意味を持つ」とも示された。
北一の頃は飛雄もチームメイトも、お互いを「信頼」していなかった。
だから「要求」は伝わらなかった。

だけど今は、飛雄は仲間を「信頼」した。
仲間も飛雄を「信頼」している。
東京合宿からの日向との「ケンカ」もそうだったけど、「信頼」があって初めて「要求」し、「ケンカ」になり、相手に「伝わる」。

「要求」を「伝える」ことの大切さ、そして(飛雄は)確かな「信頼」を知り、烏野のチームワークは一段と深まることになった。


◆◆【王冠返還】◆◆
王冠を載せたのが、「日向」というのも奥が深い。
ただ相棒だからという理由で、日向にしたわけではないと思う。


◆飛雄が「新、コート上の王様」になれたのは、「セッターとして大切なこと」を真に理解したから。
それを理解するには、仲間への「信頼」なしには成し得なかった。

そして飛雄が初めて「信頼」したのは、日向だった。(【日向への「信頼」の芽生え】/ 【「ボールを託す」】参照)

何より作品の中で、「王様」をはっきりと「否定せず」、はっきりと「肯定した」のは、日向だけだった。
(はっきり「否定していない」キャラはたくさんいるが、はっきり「肯定」したのは日向だけだった、はず)

飛雄を受け入れた烏野でも、澤村は最初入部を拒否したし、菅原も一度は否定している。
『それじゃあ、中学の時と同じだよ(菅原/1巻7話)』
先輩としてそれは正しいし、そのおかげで「変人速攻」は生まれた。

だけど日向は、最初から「王様」を「肯定」していた。
『”コート上の王様”なのに!?(1巻2話)』=「そんなに強いのに!?」。
『”王様”にトス上げさせるってことは、もうおれ王様より偉い的な?格上的な?(1巻5話)』=「おれも”王様”(みたい)になりたい」。
『いいじゃねーか”異名”。おれにもなんかカッコイイのつかないかな(1巻5話)』

そして日向は、「王様」という飛雄の「本質」を受け入れていた。
『お前の本質は王様なのだ。観念するがいい(日向/25巻224話)』
「お前は”王様”でいいんだ」と。

だからこの時に、飛雄を「王様」と呼べるのは日向しかいなかった。
「また”王様”になれよ」と言えたのは、日向だけだったのである。

『新「コート上の王様」誕生ダァー!!(25巻224話)』

だから飛雄に王冠を載せるのは、日向でなければダメだった。


◆日向、上で述べた通り月島はもとより、菅原もまた、飛雄の「成長」に大きな役割を果たしていた。

菅原は、飛雄を確かに「信頼」していた。
『技術があってヤル気もありすぎるくらいあって、何より…周りを見る優れた目を持ってるお前に』
『仲間のことが見えないはずがない』
(どちらも菅原/1巻7話)

菅原からのこの絶大な「信頼」から「変人速攻」は誕生し。
IH予選青城戦において「選手の状態を把握すること」の必要性を、月島に対してのやり方『真っ向コミュニケーション(7巻59話)』を、飛雄に教えることができた。

その重要性は、及川のセリフによって示されている。
『あの爽やか君は、飛雄に何を教えた。ただの独裁の王様が、マトモな王様になろうとしてる(7巻60話)』

日向、月島、菅原、そして澤村、東峰、清水、田中、西谷、縁下、木下、成田、山口、谷地。
さらに武田先生、烏養さん。

『次絶対、お前のトコへ球返してみせる(※)』
『そしたらあとはいつも通り、お前がベストだと思う攻撃をすればいい(※)』
(※共に澤村/8巻67話)

彼(彼女)らは常に、「影山となら勝てる」と「信頼」していた。
それが飛雄の「信頼」へとつながり、飛雄はここまで「成長」することができた。

そのことを、武田先生のセリフが証明している。
『この2,3年生が居れば大丈夫だと思える。3年生はよく「凄い1年生が入ってくれて良かった」と言いますが、影山君にとっても同じですね(26巻225話)』

烏野だったから、飛雄は「王冠返還」に至るまで「成長」することができた。

だからあのシーンの飛雄は、烏野のユニフォームでなければダメだった。


◆ところで先の【「仲間」の「力」への「信頼」/脱「孤独な王様」】にて、「飛雄は”仲間”の”力”を”信頼”したと述べた。
この時「力」と書いたのには理由がある。

【新、コート上の王様】にて、飛雄は初めて「確かな”仲間”だと自覚した」と述べた。
裏を返せばそれまでは、「本当の仲間とは思っていなかった(「信頼」していなかった)」ことになる。

さらに作中では時々、ゴミ捨て場に烏のいる風景が描かれている。
そのことから、「烏の生息地」=「ゴミ捨て場」と推測できる。

飛雄は「王冠返還」で初めて、「この人たちは本当の仲間なんだ」と自覚した。
「自分の居場所はここにある」と。

ゆえに「自分も烏野の一員である」=「烏の生きる場所」=「ゴミ捨て場」となる。

だから「王冠返還」のあのシーンは、ゴミ捨て場の背景だったのではないだろうか。

(感想/このシーン、アニメで見たら絶対泣く。4期待ってる)


次章◆◆◆【そして全国へ】※ネタバレあり(春高/椿原学園~稲荷崎戦)◆◆◆