※無駄に長くシリアスです。
※普段まんが描きの人間が4年ぶりに書いた小説&推敲もほとんどしていないのなので見辛い読み辛い誤字などありまくりだと思います。温かい目でご覧頂けたらと思います。
それでもよろしければご覧下さい。


【注意事項】必ずご覧ください

※この物語はフィクションです。実在の人物、団体、事件などとは一切関係ありません。
※黄モブ表現あり。致してる描写があります。
※黄瀬がゲスですが、訳ありです。
※黄瀬の過去、家族関係をねつ造しています。

 

※赤→黒っぽい描写がありますが、恋愛感情はありません。赤司も訳ありです。

※赤司の父や赤司家の内情もねつ造しています。【←同人誌で(アップ分にはありません)】

※赤モブを匂わす描写もあります。【←同人誌で(アップ分にはありません)】

※青桃を匂わす描写もあります。【←同人誌で(アップ分にはありません)】

 

※嘔吐表現多々あり。
※ハッピーエンドになります
※途中まです。
アップした分の再録+後半アップ+書き下ろしで同人誌できました

それでもよろしければどうぞ。

※性愛に関する描写がありますが、ネットなどから得た知識が主なので、あくまでフィクションとしてご理解下さい。事実と異なる場合があります。詳細を知りたい方はご自身でお調べ下さい。苦手な方はご覧にならないようご注意下さい。
批判したりする意図はありません。


 

 

 

 

 

 

 

ボクは人魚姫の物語が、あまり好きではなかった。

王子の愛を得ようと人間になった人魚姫。
だけれど不完全なその体は、王子に愛を伝える術を持たなかった。
願いがかなうことはなく、王子を殺せば助かると言われても、自らが消えることを選んだ人魚姫。
海の泡と消え去った。

なんて悲しい物語なんだと思うと同時に、恋の残酷さが恐ろしかった。
恋をするために払った犠牲。
美しい声を失っていなければ、王子の愛を得られただろう。
あの時、貴方を助けたのは私です、そう真実を告げられていたのなら、払った犠牲は幸福の礎となれたのに。
文字を覚えるには、足りな過ぎた時間。
不完全な故に、泡となった人魚姫。
美しい完全な人間でなければ、美しい結末など迎えられないのだと、見せつけられた気がした。






「じゃあね涼太、また誘ってね」
「気が向いたらね」
「待ってるわ」
黄瀬君と女性の声に続き、玄関の扉の締まる音がした。それはボクにとって、悪夢の終わりを告げる音だ。
時刻を確認すると、深夜2時。
玄関のすぐ横にあるボクの部屋。
その扉の真ん前が、音が聞こえるまでのボクの定位置だ。
今日もその音が聞こえたことに安堵し、布団に丸まりながら扉の前にうずくまっていたボクは、ベッドへと移動する。
窓の外に目をやると、雪が降っていた。
やけに静かなのはこのせいかと思いながら、ようやく訪れる眠気にその身を委ねた。


翌朝、携帯のアラーム音にいらつきながら眠い目をこすり、ボクは朝食の準備をする。メニューは大体同じだ。オニオングラタンスープ、カリカリトースト、サラダ、目玉焼き、オレンジジュースを1人分。
それらをテーブルに並べていると、黄瀬君が起きて来る。
「おはようございます」
「…はよっス」
昨夜のことなどなかったかのように、ボク達は挨拶を交わした。
黄瀬君は顔をうつむかせたままで、その表情は窺い知れない。
黄瀬君はもうずっと、ボクを見てはくれない。
身だしなみを整え、着替えを済ませた黄瀬君は席に着くと、オニオングラタンスープを口に運んだ。
「……」
「……」
無言の食卓に、スープをすする音だけが響く。
スープを食べ終えた黄瀬君が無言で立ち上がり、玄関へと向かう。
「今日も遅くなるから」
「…わかりました。雪が積もっていると思うので、気をつけてください」
「……ん」
そう告げるとボクの方を見向きもせず出かけて行った。
ボクは残された朝食を食べながら、赤司君の言葉を思い出す。

”約束しろ。お前が壊れる前に、黄瀬から距離を置くと”
(…ボクはまだ、大丈夫です)
黄瀬君の背中を脳裏に浮かべながらボクは、今夜また訪れる悪夢の時間を思い、目をつぶった。



ボクは黒子テツヤ、大学2回生。同じく2回生であり、人気モデルでもある黄瀬君とボクは、大学こそ違えど同居している。
地味で影の薄いボクに比べ、黄瀬君は綺麗でカッコ良くて、かといって奢らず、好きなことには努力を惜しまず、人一倍がんばり屋さんで、明るく、そして人を惹き付けてやまない、まさにモデルや芸能人になるべくして生まれた人間とでも言うべき存在だ。
そんな正反対のボク達がなぜ同居をしているのかというと、ボク達はかつて、恋人同士だったからだ。

ボクは黄瀬君が好きだった。
黄瀬君もボクを好きだと言ってくれた。
高校1年の冬から付き合い始めたボク達は、幸せだった。
それはとても甘くて、切なくて、夢をみているようだった。
黄瀬君はボクをとても大切にしてくれた。
ボクだけを好きだと言ってくれた。
よく笑って、泣き虫で、優しくて、子供っぽいところがあって、カッコ良くて、誰よりも大好きで、大切で。
初めて、愛しいという感情を教えてくれた黄瀬君。
誰よりも幸せを願った。

その黄瀬君が壊れてしまったのは、忘れもしない、一昨年の6月18日。
それは、黄瀬君の誕生日。
あの日、ボクが黄瀬君を壊してしまった。
ボクが黄瀬君を、追いつめてしまった。
あの日から、キミから笑顔が消えた。



だから、今のボクの苦しみは、その罰。
許されようとは思わない。
ただ、キミの気が済むまで、キミが望む限り、ボクはキミのそばにいる。
キミがお姫様に出逢えるその日まで。


ボクはキミの、人魚姫になりたい


『ボクは人魚姫になれなかった』